バグパイプはひっきりなしに

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3.6 NJC1回戦レポート

 

本間朋晃VS鈴木みのる

 前哨戦から熱い張り手の応酬を繰り広げていた両名に筆者は熱視線を送っていたが、期待にたがわない熱い試合が展開された。

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 ↑の動画を見てから筆者は本間選手のファンである。

 歩行さえままならない状態から彼はセルリアンブルーのリングへと帰ってきた。ケガ以前の彼の動きに比べれば現在の動きはすぐれているとは言えないだろう。

 身体的なキレの良さこそ失ったかもしれないが、負けん気の強さとタフネスをさらに向上させて本間選手はカムバックした。

 彼のケガ後の集大成をこの試合で筆者は見たと思う。

  鈴木選手のゴッチ式のムーブから二度も抜け出しロケットこけしで迎撃する。

 本間選手のエルボーにぐんぐんと力が込められていき鈴木選手を本気にさせていった。

 何発も張り手や打撃を受けても止まらない本間選手の姿に心が打たれた試合だった。

 この試合は個人的にプロレスという競技について再考することに繋がった。

 体の状態が良いとは決して言えない本間選手が観客の心を打つ試合ができる。

 それはケニーオメガ選手と棚橋弘至選手がイデオロギー闘争をした時の煽りVで棚橋選手が語った

 「体力のあることや、凄い技が出来ることが重要じゃない」「魂のこもったエルボーなら一発で心に刻める」

 というプロレス観を体現したものだったと思う。

 派手なムーブがなくても、身体は自由に動かなくとも、観客の心を揺さぶる試合ができるというのがプロレスという競技の根っこの部分だと考えさせられた一戦だった。

 

ジュースロビンソン VS KENTA

 ジュース選手は非常に陽気なキャラクターが特徴的で個人的に好きだが、世間の評判は良好とは言い難い。

 試合のテンポが悪い部分が散見され、対戦相手に合わせて柔軟な試合を行う器用さも持っていないというのがおおよその意見で筆者も試合運びに関しては同様の意見だ。

 しかしセントーンに代表されるように技の一つ一つは悪くない。

 何かあと一歩で大化けするはずなのだ、今はその時ではないがいつか来るジュース選手の華々しい未来を期待している。

 KENTA選手はUS権利証をかけて戦う予定だったジュース選手が欠場した理由である目のケガにフォーカス。目の周辺部を攻めるというアイデアだ。ゴングで殴打したり鉄柵で顔を挟んで攻撃するなど相手の弱点に付け入る狡猾さを見せた。

 ジュース選手が新調したヘアスタイルにも着目し執拗に引っ張るなどして精神的ダメージを与えていく。 

 場外でのファイトもあり多彩な試合展開で試合は進んでいく。

 この試合の決着はジュース選手の〝目〟が焦点になるだろうと予測した筆者はGo 2 Sleepが決定打となるのだと思っていたからフィニッシュには驚かされた。

 ゲームオーバーでジュース選手からタップをゲットしたKENTA選手が二回戦へコマを進めた。

 KENTA選手は記憶に新しいAEWへの殴り込みに始まりジョンモクスリー選手と悲願のタイトルマッチを行うなどして今年も評価を高めている。

 このNJCで勝ち進むことで国内マットでもKENTA旋風を起こしてほしい。

鷹木慎吾VSオカダカズチカ

 まるで優勝決定戦のようなカードが一回戦で組まれた一戦。

 どちらが勝っても戦後の勢力図や新日本の方向性を変えてしまう一線でもあったと思う。

 個人的には試合中の拍手の量からして鷹木選手を後押しする雰囲気があったのが意外だった

 lineで投票が行われたNJC優勝者予想でオカダ選手はぶっちぎりで一位だった。にもかかわらず現地のファンは鷹木選手へ拍手を送った。

 挑戦者のポジションでありながら急速に力をつけている鷹木選手が支持を集めたという事だろうか。

 オカダ選手は前日の3.5で行われた前哨戦で腰にテーピングをしていた、頑丈さが取りざたされるオカダ選手が体を痛めている。

 ファンの目にも腰をかばっていることが一目瞭然である。それを鷹木慎吾選手が放っておくわけがなかった。

 雪崩式のブレーンバスターに代表される腰に大きなダメージを与える技を連発していきIWGPヘビー復活の悲願を達成すべくNJCを戦うオカダ選手を追い詰める。

 多分に攻めている鷹木選手だが勝つには越えなくてはいけない障壁があった。

 オカダ選手のマネークリップである。

 G1クライマックス30ではこの技によって締め落とされて無念の敗北、あれから数か月が経ってなおマネークリップの前に沈むわけにはいかない。

 解説のSHO選手が言うようにあと数秒ロープブレイクが遅れれば落ちていたとされるまでに追い詰められるも最後の最後で逃げ切った鷹木選手。この瞬間、価値への希望が見えてきた。

 さらに鷹木選手が流れを持って行ったのがオカダ選手のショートレンジラリアットをカウンターのMADE IN JAPANで切り返した場面だ。

 正直言ってぶったまげた、あの技はカウンターにも使えるのかと筆者は震撼させられた。鷹木選手には引き出しが無限にあるのではないかと感じた瞬間だった。

 そして激しい攻防の末レインメーカー式パンピングボンバーが炸裂。

 いつもの試合ならば相手選手の技をぶんどってしまうムーブともいえるがこの試合に限ってはオカダ選手のお株を奪うことで団体内でのポジションも奪ってやる!という気概が見られた。

 さらには代名詞のパンピングボンバーが決まりオカダ選手は豪快に吹っ飛ぶ。試合は決したと思ったがオカダ選手は何とかキックアウト。

 鷹木選手はフィニッシュにかかるがオカダ選手は依然諦めることはなく、伝家の宝刀レインメーカーを抜いた。

 しかしまたも鷹木選手が一枚上手だった。レインメーカーを回避すると素早くラストオブザドラゴンへ移行、マットにオカダ選手をたたきつけ3カウントを奪取した。

 

鷹木慎吾、圧倒的!

 鷹木選手がこの試合を支配していたと言っても過言ではない。オカダ選手の繰り出す技すべてを読みきったようなカウンターの嵐に筆者は感服した。

 勝つことすらも難しい相手であるオカダ選手を手のひらで転がすような試合運びはG1で負けた悔しさが垣間見えるのみならず鷹木選手の成長が多分に感じられるものだった。

 筆者的にオカダ選手が創り出す好試合の法則としてうつろな目をしたオカダ選手がカメラに抜かれるというものがある。

 完全無欠の彼が追い詰められているというのがファンにとっても一目瞭然であり感情移入を加速させるものであり、対戦相手の勢いもそれだけあるという良い証明になる。

 この試合ではそのうつろな目をしたオカダ選手の姿がしばしば見られ、一気に期待度が増したのは言うまでもない。

 しかし一つ心配なことがある、腰を痛めているという明確な理由があるとはいえ終盤のオカダ選手に粘りがなかったこと。

 どんな絶望的な場面でも最後の踏ん張りから試合をひっくり返してきたオカダ選手を見てきただけに腰の状態が危惧される。

鷹木式オカダマイクが炸裂、渦巻く鷹木待望論

 鷹木慎吾選手と言えばパンピングボンバーとマイクアピールである。

 この試合後にもキレッキレのマイクアピールを披露。大阪城でオカダ選手が行ったマイクパフォーマンスをオマージュして会場を盛り上げる。

 そして締めにはばっちりとカメラ目線で鷹木慎吾待望論が聞こえる、飯伏にはふざけんなという気持ちがあると発言、注目の優勝候補決戦を制したことからも声や表情から達成感が感じられるいいマイクだった。

 

 オカダ選手の早期敗退でますます先が読めないNJC!この後の試合も楽しみなものばかりで筆者としてはワクワクが止まらない。

 

 

3.5 を見てフィンレーに期待が膨らんだ。

フィンレーのコンディションがすこぶるいい!

 3.5のタッグマッチを見てフィンレー選手が気になったので彼について記そうと思う。

 

 NJC開幕前一回戦の最注目カードは?と問われれば鷹木慎吾選手VSオカダカズチカと大会前なら答えただろう、しかし今ではデヴィッド・フィンレー選手VSチェーズ・オーエンズ選手の一戦も個人的に楽しみになってきた。

 

 理由は明白で両選手のコンディションが良好なのが目に見えるからだ。

 

 チェーズ選手はKOPWで矢野選手に挑戦した際の試合巧者ぶりが記憶に新しく、矢野選手を巧みなロープさばきで追い詰める姿を見せた。

 そしてデヴィッド・フィンレー選手のコンディションが筆者には特別いいように映るのだ動きのキレもさることながら常々不安視される体形もバキバキとまでは言わないがきれいな形に収まっている。

 タッグプレイヤーとしては一流であるがシングルプレイヤーとしては今一つパッとしない活躍具合だったフィンレー選手がこのNJCで大きく躍動するのではないかと筆者は予想する。そのぐらい彼の動きにはキレと説得力がありポジティブな空気を身に待っとっているように見える。

 京都での両選手の対戦から目が離せない。

 

 

 

3.4 旗揚げ記念日のレポート

 

 

 興業全体を通して熱戦だらけだった。3.3旗揚げ記念日、各試合で気になったことと感じたことを記していく。

 

第一試合 後藤洋央紀&本間朋晃&ゲイブリエル・キッド&マスター・ワトvsタイチ&鈴木みのる&ザック・セイバーJr.&DOUKI 

 試合中のムーブとしてはゲイブリエルキッド選手のドロップキックが最も印象に残っているかもしれない、毎度いいドロップキックだと思わされる、彼のドロップキックは客を呼べるものだと確信しているからこれからも磨きをかけていってほしい。

 試合後NJC一回戦での対戦相手同士がヒートアップ特に鈴木みのる選手と本間朋晃選手の張り手の応酬には心が揺さぶられた。期待度が決して高いと言えなかった彼らの対戦だが正直猛省した。しっかり注目して見るべき試合だと認識するに至ったほどの熱いぶつかり合いだった。

 本日3月4日に行われる後藤タイチ戦にも注目だ。試合後にらみあう両者の迫力は物凄かった。双方技が派手かつ受け身もうまいので名試合間違いなしだ。

 

第二試合 田口隆祐&トーアヘナーレ&デビッドフィンレー&ジュースロビンソン&棚橋弘至VS石森太二&ジェイホワイト&チェーズオーエンズ&KENTA&EVIL

 まずはフィンジュースの二人にお帰りと言いたい。インパクトで見せた好試合をそのまま再現できるようなコンディションで新日本に帰ってきてくれた。新衣装も非常に筆者好みのデザインでジョジョ5部に出てくるパープルヘイズみたいでかっこよかった。

 この試合、特筆すべきは田口選手が見せた「ドラゴンリングイン」だろう。コーナートップからリング中央のEVIL選手目掛けて跳び技を放ったと思ったが何故か至近距離に着地、即座にラリアットを放つがあえなくカウンターのEVILをもろに食らってKO。プロレスを見ていてあんなに笑ったのは初めてかもしれない。あとEVIL選手も笑いをこらえていたことを筆者は見逃さなかったからね。

 この試合は一種の清涼剤のようでもあった。二冠統一戦やNJC一回戦を後半に控えた会場の空気を少し和らげたのではないだろうか。田口監督、ジュースロビンソン選手の二人はやはり興行に出てくれるだけでパッと明るさが増すことを再確認した試合だった。

 NJCに参戦する選手の中ではデビッドフィンレー選手が気になった。なにせコンディションが良さそうな動きをしていたから。彼はタッグ戦線にとどまることなくシングルでも上位に食い込めるポテンシャルを秘めていると考えているため健闘を祈る。

 

第三試合 SHO&石井智宏&オカダカズチカVSBUSHI&SANADA&鷹木慎吾

 SHO選手のスピアーは何度見ても絶品だ。アマチュアレスリング出身のバックグラウンドも垣間見える良い技だと思う。

 オカダ選手の腰の状態が思わしくなさそうだったのが気がかりだ。彼は新ベルトと旧ベルトを巡る論争でも中心人物になるとみられるので怪我無くNJCやその後の試合を乗り切ってもらいたい。

 関係性に着目するとSANADA選手と石井智宏選手の試合が楽しみである。広島で行われた飯伏選手との二冠をかけたタイトルマッチ、試合は好試合であったもののプロレスというには美しすぎるものを見ている感覚になった。泥臭さや執念の部分がもう少しだけ表層化して欲しいと思ったのを覚えている。厳しい意見だが筆者としてはSANADA選手には突き破るべき殻がまだあると感じている。

 そこに石井智宏選手がぶつかるというのは朗報だ。言葉は少なくとも石井智宏選手の考えや気合というのはリング上はもちろん、時々こぼすように発するバックステージでの言葉からも伝わってくるのだ。まさにSANADA選手に足りない部分を補ってくれる選手なのでぶつかり合って様々なものを吸収してもらいたい。

 

まさかまさかのドームと横浜

 ぶったまげた。 

 特報映像を見て「おぉ~横浜スタジアムで試合するのか、去年の神宮のスケールアップ版をやるのね」と思っていた直後、映像には東京の文字が。屋外球場でプロレス興行をすることを定番化していくのだと考え、バロン山崎さんの『神宮球場!!』のアナウンスが来るだろうと待ち構えていると予想の上を行く「東京ドーム」というワード。

 頭真っ白になるっていうのを初めて経験したかもしれない。

 かつての新日本は年初のみならず数回は東京ドームを使った興行を行っていたことは知っていたがまさか今年復活するとは。ゴールデンタイムにプロレスの試合が組まれていた頃の幻想だと思っていた年に複数回、東京ドームを使用する興行を再び行うというアナウンスにワクワクしている。

 個人的な予想としてはAEW等、海外団体との抗争が行われるのではないかと考えている。もしくは二部制の発表があるなどともかく先の展開が全く読めなくなってきた。楽しみ。

 

 NJC開幕戦 第四試合 小島聡VSジェフコブ

 小島選手もコブ選手もまさに重量級といった出で立ち。今回のNJCはユナイテッドエンパイアが躍進すると個人的に予想しているため最初はコブ選手に肩入れしていたのだが小島選手恐ろしい。とても50歳の人間とは思えないボディと切れのある動きを見せ、何としても勝ちがほしいという執念が全身から伝わってきた。

 しかし相手は超のつくような怪力、ジェフコブ選手だ。場外に飛んだ小島選手をキャッチしてから放り投げる場面を見て小島選手が勝てるビジョンはなくなってしまった。

 正直なところもっと余裕でジェフコブ選手が一回戦を突破すると考えていたのだが結果はそうではなかった。コブ選手の試合後の表情からは余裕は感じられず第三世代の意地を見た試合だった。

 

セミファイナル NJC一回戦 内藤哲也VSグレートオーカーン

ericroxxett.hatenablog.com

 こちらの記事でもお伝えした通り、オーカーン選手が個人的に応援している選手筆頭である。器用貧乏だった印象の試合が棚橋選手とのNEVER戦で明らかに面白い試合をするようになっており、本人の熱が伝わってきたことでファンになってしまった。

 しかし相手はあの内藤選手である。チャンピオン格でありながらベルトを保持していなくても輝きが衰えないレジェンドの域に片足を突っ込んでいる偉大な選手だ。

 オーカーン選手が勝つには膝を攻めるしかないというのは試合前から考えていたがシッカリと膝を攻めていった。特筆すべきは膝へのアイアンクローだろう。誰でも出来て、思いつきそうなのにあんな膝攻め見たことがなかった、フィニッシュ技のドミネーターは相手をアイアンクローで締め上げながら叩き落す技であるからその説得力は抜群だ。

 その後も膝を攻め、試合を有利に進める小技、様々な締め技を的確に使用し、最後まで膝を重点的に攻め立てた。最終的にはレフェリーストップという形で試合を終わらせ、ついにシングルマッチで大物を倒すことに成功した。

 この試合では敗者になった内藤選手だがオーカーン選手の辮髪を引っ張ったり、後ろで腕を組むモノマネをしてみたりと挑発することが本当に上手だと感じた。しばしば内藤選手は王者ではなく追いかけたり自由な試合をしている方が面白いと言われるが筆者もその意見に同意だ。チャンピオンであった時より個人的にはイキイキしているように見える。

 内藤選手は先のインターコンチネンタル王座戦もケガを押しながらの出場だったしコンディションが万全とは言えない、試合に出たいというはやる気持ちはNJCの間だけでも抑えて、ゆっくり休んでほしい。

 オーカーン選手にとってはめでたい。凱旋帰国後スポットライトこそ当てられるものの、試合で結果が出せたとはいえずゼンパイアという蔑称までつけられた。しかしここで内藤選手に勝ったことが大きな自信になるはず。ユナイテッドエンパイアの活躍を楽しみに次の試合を待つ。

 

メインイベント 飯伏幸太VSエルデスペラード

 まず最初に、筆者は飯伏選手とデスペラード選手両方のことを特段応援している、いわば俺得な試合だった。だからこそ、この試合でおこったヒールとベビーの逆転現象は大きなカタルシスがあるとはいえ心が痛かった。黒いベビーと白いヒールの対比を時間が経った時に最初はこうだったと苦笑しながら見られるようになっていてほしい。

 

 観客を味方につけたのは圧倒的にデスペラード選手だった。足攻めにも拍手が起こり、デスペラード選手がする一つ一つのムーブには歓迎ムード、飯伏選手の行動にはまばらな拍手といった状況で試合は進む。

 しかしさすがはヘビーチャンピオン飯伏選手、観客の反応が悪かろうと何だろうとデスペラード選手に主導権は握らせない。フットスタンプで迎撃するなどしてデスペラード選手の勢いを殺し圧倒していく。

 ただしデスペラード選手にはある意味で必殺技と呼べる一撃がある。「ロコモノ」だ、BOSJ27で何度も何度も不利な試合の流れを変えてデスペラード選手を優勝決定戦にまで引っ張ったのはこの拳あってこそだった。

 決まれば流れを持っていける起死回生の一発を繰り出したところに飯伏選手のハイキックが同時に放たれ両者リングに倒れこむ。筆者はこの場面が試合の大きなポイントだと思っている。ロコモノが決まればエルデスペラード選手にも勝機があると踏んでいた、それは先ほど述べたように流れが激変する一撃だから。しかしロコモノを当てることにこそ成功したが迎撃を食らい流れを断たれた。

 デスペラード選手は強い。圧倒されながらもカミゴェを回避して即座にヌメロドスに移行。この関節技は決まれば終わると思うレベルで相手をマットに沈めてきたがこれすらも飯伏選手は耐え抜き最後はカミゴェを連発で浴びせて勝負あり。

 試合後両選手はがっちりと握手を交わし会場からは拍手が、健闘を称えあったのちリングサイドで見守っていたタイチ選手と金丸選手と共にデスペラード選手は退場。

 

マイクと様々なもの

 この試合で大きく心に残ったのは圧倒的な飯伏選手の強さと覚悟だった。試合では圧倒しているもののマイクは難解でありすべてのファンが乗っかれるものではない。そんな批判を戦う姿勢と伝わらないながらも実直に伝えようとする姿勢でかき分け始めたのではないかと思う。

 憶測だが飯伏選手は今、目の前が真っ暗なのではないだろうか。だから試合後ライガーさんや棚橋選手に寄りかかってしまうような発言があった。特に棚橋選手はどっしりとした表情でその発言をとらえた。

 筆者には「そうじゃないだろ」という棚橋選手の思いが彼の表情から伝わった。

 自分で打ち勝たなきゃ意味がない。試合中「チャンピオンとしての査定期間に入った」と何度か繰り返したことからもそれは明白である。独り立ちの時なのだ。

 思えば飯伏選手の隣にはいつもケニー選手、中邑選手、棚橋選手といった友人であり師匠である存在がいるのが当たり前だった。

 でももう飯伏選手は追われる側の人間になった、となりで先の見えない将来を照らしてくれる存在はもういない、自分で照らしていかなくてはならないのだ。

 非常に苦しい時期だと思うが時代を作った選手たちは厳しい時代を乗り越えて現在の地位にいる。飯伏選手が一皮むけるためにもこの試練を乗り越えてほしい。

 

まとめに

 NJCやベルト戦線、東京ドームでの試合いろんなものが変化するこれからの新日本プロレスをこれからも注視して追っていきたい。

大きな変わり目と新日本プロレス

 ここ数日、新日本プロレス界隈はベルト統一の話で持ち切りになっている。時代の変化を目の当たりにしている人の反応がたくさん見られるので人間観察好きの筆者としては面白い。

 考えてみればこれまでにも大きな変化を新日本プロレスはしてきた、個人的には中邑選手が総合格闘技とプロレスの二足の草鞋で突き進み、独自の世界観を開花させたこと。

 棚橋選手がチャラ男キャラをひっさげストロングスタイルの呪いと戦ったことの二つが大きな変化だったのではないかと思う。この二人がすごいのは理不尽ともいえる状況においても折れることなく自分の芯を見失わなかったことだ。

 

中邑選手の場合

 正直誰よりも苦労したのではないかと思う。総合格闘技の素養があるとはいえ当時隆盛を極めた総合格闘技の試合に駆り出され新日本がプロレスをしなくなった(総合格闘技色を打ち出し始めた)頃に23歳の若さで団体内最高峰のベルトを獲得。

 自伝や当時を振り返る書籍を読んだところほとんど味方がいない状況だったようだ。若手からは妬まれ、先輩からも先を越されたと恨まれた。ファンからは総合とプロレスどっちがしたいのかなどとののしられる。

 そういった苦労をしながらもめげることなく邁進した中邑選手は代名詞ともいえるクネクネとしたスタイルを獲得。今でこそ大人気のクネクネスタイルは当初受け入れられなかったという。それでも続けることで多くの人の心をつかみ、「左遷」と評されたインターコンチネンタルベルト戦線で自分の世界観を爆発させた。

 2016年にWWEに移籍してなおファンの心に刻まれた中邑選手の姿は薄れることはない。

棚橋選手の場合

 間違いなく現在の新日本の礎であり、栄光の立役者である。棚橋選手は世間が格闘技ブームに沸く中であってもプロレスをやめなかった。

 中邑選手が与えられた試練を乗り越えていったタイプとすれば、棚橋選手は自分で問題を探しだして改革を起こしていくタイプであった。

 ゴールデンタイムでプロレスの試合が組まれていた頃と低迷した時期では選手の知名度に開きがあると気づき、積極的にプロモーションを行い「殿様商売」からの脱却を図る。

 キャラクター性を選手に付加することでキャッチ―さを獲得しようとする。

 ストロングスタイルという言葉は呪いだと言い切り、道場にかかっているアントニオ猪木氏の写真を外すよう提言したりと枚挙にいとまがない。

 それでも彼の姿勢に賛成してもらうには時間がかかった。本人が話すところによると4年はブーイングをされ、ファンから受け入れられなかったという。

 棚橋選手の恐ろしいところは「マンネリ」ともいわれかねないレベルで物事を継続すること。「愛してます」の絶叫、仮面ライダー風のいでたち、百年に一度の逸材というキャッチフレーズ、すべて最初は滑りっていたと本人も語る。でも受け入れさせてきたうえでついには新日本プロレスという大きな団体を破壊して再生するところまでもっていった。

 もう誰も彼の姿勢を否定することなんてない、自身の行った改革が間違っていなかったことを証明した。

 

さて、ここからが本題

 中邑選手と棚橋選手に言及したのはスタイルこそ違えど

「逆境にめげず状況をひっくり返した」

 という点では双方一致しているのだ。

 個人的にこの記事で伝えたいのは飯伏選手へのエールだ。

 新しいことをすると大きな反発を招くのは必然だが現代においてはSNSというツールがある。コメント機能で気軽に有名人に接触できる一方、心無い意見も直接届いてしまうのだ。届かなくても可視化されてしまう。

 棚橋選手が言うように、二冠統一に否定的な意見が9割というのは間違いないだろう。

 でもひっくり返せるんだ、それは先人たちが証明している。

 そして不安や不満を吹き飛ばした後には新しい世界が待っている。

 個人的にはその新しい世界が見てみたい。

 だから負けないでほしい、筆者は飯伏選手が言う「逃げない、負けない、諦めない、そして裏切らない」という言葉が大好きだ。その言葉が本当の意味で実現される日を心待ちにしている。

ありがとうエルデスペラード

二冠統一で一番モヤっとしている意見に反論してくれる

 IWGP世界ヘビー級が誕生すると発表があって二日たった。棚橋選手の意見を借りるなら否定派が9割といった状況で...納得のいかない人たちが新ベルトに、会社に、飯伏選手にとがった言葉を浴びせている。

 

 賛成か反対かは個人の自由である。

 

 ファン歴も、ベルトへの思い入れも、好きな選手だってそれぞれ異なっているのだから。

 

 ただ飯伏選手が外様だから統一が納得いかないという意見が個人的にはすっきりしない。新日本にしか所属せずヤングライオンを経て活躍しなければ環境を変えるような決断が許されないというのはいささか古い考えではないかと思ってしまう。

 

 実際新日本には生え抜きでない選手が多数所属しており、彼らの力なくしては多彩なプロレスの試合を見ることはできないだろう。リスペクトを忘れてはいないだろうか。

 

 他の団体で育とうが何だろうが新日本のレスラーなんだというのが個人的な意見だと再確認したところにデスペラード選手がこんなツイートをしていた。

 

 

 

 まったくもって同意見である。しかもこれをデスペラード選手が生え抜き側の選手として言ってくれたことで話の焦点はそこじゃないという事がはっきりした。

 

 二冠統一という大きなテーマであるから拒否反応が出る人も多くいる、しかし飯伏選手の人格否定まで始めたり、彼の出自を叩いたりすることが果たして正しいのだろうか。

 

 本来我々が議論するべきはどうやって飯伏選手とデスペラード選手が戦うか、ベルトの行方とその後ではないだろうか。

 

楽しみになってきたぞ

 

 

 去年のBOSJ27、個人的なMVPはエルデスペラード選手だ。その本人が当時のような集中力をもって試合に挑むというのだからとても楽しみだ。

 

 飯伏選手とデスペラード選手は階級こそ違えど体重にそこまでの差はなくむしろ身体の見た目的にはデスペラード選手のほうがゴツいぐらいである。

 

 つまり橋本選手VS獣神サンダーライガー選手のような階級差がハッキリとしたヘビー対ジュニアといった試合ではない。

 

 ヘビー級が勝つという予定調和で終わるかどうかはまだわからないのである。

 

 エルデスペラード選手は飯伏選手への挑戦表明の際、ヘビー級の選手と我々ジュニアの選手が旗揚げ記念日で戦うと発言した。デスペラード選手はジュニアの面々を背負って戦いに挑むのだ。

 

 これはもしかするとジュニアヘビー級が東京ドームのメインイベントにのし上がるための第一歩かもしれない。

 

 ならず者ルチャドールが向かう先はいったいどんな場所なのか、明日の決戦が楽しみである。

俺はオーカーンを推していこうと決めた。

 2.28大阪城ホールで行われたキャッスルアタック最終日。NEVER、ジュニアヘビー、インターコンチの合計3つのタイトルマッチが行われた、ジュニアヘビーはデスペラード選手とファンタズモ選手を応援しているので当然注目していた。二冠も統一か阻止かのイデオロギー闘争であったため注目せざるを得なかった。しかしNEVERについて注視していたかといえば答えはNO、個人的にタイトルマッチの中では注目度が低かった。けれどオーカーン選手がそれをひっくり返してくれた。

 

辻陽太とグレートオーカーンと

 この試合には二つのテーマがあったと思う。オーカーン選手が初タイトルを獲得するか否かというものと、棚橋選手の現付き人、辻陽太選手がユナイテッドエンパイアに加入するかというものだ。

 試合開始後からオーカーン選手は辻選手に対しアクションを起こす、棚橋選手に攻撃するよう促したり椅子を要求するなどして辻選手を揺さぶっていく。辻選手の抱える早くヤングライオンを卒業したいという願いを積極的に利用した。オーカーン選手は自分の意志で海外遠征に出て新日本に帰還するという特例を通したレスラーである。オーカーン選手についていけば自分もレスラーとして新たなステージへ登れるのではないかと辻選手が思うのも無理はない、そこを巧みに利用してくるスマートな部分に気付いてからはグッと試合への注目度が上がっていった。

 結局辻選手が裏切ることはなかったが、あのシンキングタイムの長さは筆者をハラハラさせるには十分なものだった、このあたりからこの試合に惹かれていった。

NEVERらしい戦い

 棚橋選手がスリングブレイドを二連続で繰り出たとき「これは決まった!」と筆者は思ったがオーカーン選手は即座に立ち上がりカウンターのラリアットを棚橋選手に見舞った。この瞬間心が大きく揺さぶられた。相手の大技を食らおうとも前進することをやめなかったオーカーン選手の覚悟が画面越しにも感じられたのだ。

 素早く起き上がり、相手に反撃するさまをみて筆者はタフでハードヒットな試合ができる若手が現れたことがたまらなく嬉しかった。技術やマイクパフォーマンスといったものは向上していくものだが、各個人に備わった闘志は誤魔化しが利かないものだ。プロレスラーとして最も必要とされる資質が備わっていることをまざまざと感じさせられた場面だった。

正直推さない理由がない

 決着がつく直前に繰り出した旋回式の新技も派手で良い技だったし開けていない引き出しがまだまだあるように感じた。WK15での棚橋選手とのスペシャシングルマッチから2か月近くしか経過していないというのに大きな成長が見られた今、オーカン選手に期待しかない。

 あわよくば中邑選手がかつてインターコンチベルトを自分色に染め上げ、のし上がっていったようにNEVERのベルトをオーカーン選手の手でこれまで以上に輝かせられるんじゃないかという希望すら見えている。

 外野から何を言われようと我を通していくオーカーン選手にはそれが出来ると信じている。自身の野望のためにこれからも突き進んでほしい。

飯伏幸太とIWGP世界ヘビー級王座

二冠統一決定か

 

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 飯伏幸太選手が望んでいた二冠統一が実現される運びとなった。内藤選手がインターコンチベルトにのみ挑戦することを表明した理由として今すぐにでも二冠が統一されてしまいそうだというものだったが個人的には「そんなスピード感で統一はしないだろう」と思っていた。脈々と受け継がれてきたIWGPヘビーとインターコンチの歴史をそう簡単に変容させる訳がないと考えていたが東京スポーツの記事では統一が決定事項のように書かれている。一夜明け会見でも飯伏選手の主張は大きく変わらずといったところ。これからどういった動きがあるかは置いておき、二冠統一に絡む個人的な考えをいったん整理したいと思う。

 

博打感は否めない

 ベルトというのはプロレスにおける最重要アイテムである。そこにテコ入れをするのは個人的には博打だと感じてしまう。団体の象徴たる存在が変わってしまうのは大きな推進力を生む可能性があると共に急ブレーキにもなってしまうのではないかという懸念がある。人間は弱っちいので不安の感情が先行する、急ブレーキしてしまうのではないかという考えが頭の中を駆け巡る。

 そしてプロレスは選手と観客との共同作業だと考えている自分としては、声が出せないことで観客の感情が見えづらいコロナ禍での興業が続く中、観客のレスポンスが明確に得られない状態で大きな決断をしたことに拒否反応が出ているのかなと考えている。

 ここで内藤選手を例に挙げるのは心苦しいがスターダストジーニアス時代に彼はベビーフェイスでありながら観客からブーイングを受けた過去がある。会社の意向と観客の願望に大きな溝が生まれたことで起こった事故だと考えている。これがIWGP世界ヘビー級王座でも起こってしまうのではないかという恐れがある。

 

飯伏選手に任せるという事

 筆者は飯伏幸太選手のことはとても好きである。理由として美しい体をしていて技も派手、入場曲がカッコイイという理由があるのだがその一方で欠点も明確で発信の仕方が多くの人間には理解しがたいところがある、発信力が弱いわけではないのだが誰にでもわかるような説明や因縁のつけ方が上手ではないのだ。

 特に発信力が強く言葉でも客を乗せられる内藤選手の手法に慣れたファンであればあるほど飯伏選手の〝難解〟な発言の数々に混乱しているところにベルト統一という一大事件が起こり感情に整理がつかないのではないだろうか。雑にまとめるなら意味不明な発言をしている人がトップに立って大鉈を振るう状態に映るのではないだろうか。コメント力に関しては新設ベルトを輝かせていくうえで必須になってくると考えられるので成長してくれることを心の足から願っている。

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  正直1.5でのsanada選手とのマイクアピール(上の動画参照)を見たときは頭を抱えたがキャッスルアタック最終戦後に見せたエルデスペラード選手とのマイクアピールでは「しょっぱかった」「8年前だよ(正確には7年前)」といった言葉での殴り合いが出来ており明確な成長が見られた。

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  こういったアピールが多発できるようになってくれば飯伏選手の評価は上がってくるはず、心惜しいのは徐々に成長している飯伏選手を見ていると統一の時期が急すぎたのではないかと思ってしまう。もっと成熟したチャンピオンとして統一するのであれば受け取る側にも様々な考え方が広がっていたはず。まだ「二冠統一するの!?」といった心構えの人が多い状態では非難を浴びやすくなるのは致し方ない。

成長するチャンピオンとその先に

 先ほども述べたように飯伏選手はチャンピオンになってからコメント力が向上しており立場が人を作ることを体現し始めている。個人的にはもう少し見守っていきたいし、飯伏選手ならそれが出来ると信じている。

 ファンというのは勝手なもので面白いものを見たい、常に新鮮なものを提供してほしいなどと願っているくせに飯伏選手のような出る杭を打とうとする、自分もそうだけど冷静になって考えれば、棚橋選手も中邑選手も内藤選手もそれまでの空気を破壊して新しい価値観を生み出したからこそ手のひらを返した大勢からから支持されてきたのだ、破壊がなければ成長もない。

 停滞気味だった新日本の空気を一変させた今回の決断は先述したように博打である。しかも世界に打って出る博打だ。個人的な解釈としてIWGP世界ヘビー級ベルトはこれまで以上に外敵との抗争で磨かれていくのではないかと考えている。こう考えれば少し合点がいくのだ、インターコンチの元来の役割は海外の選手と戦うためのベルトであったはずである。インターコンチ廃止ではなく統一という形を選んだのには少々内向きであったIWGPヘビーをもっと外部に開けたベルトという認識にして、アントニオ猪木氏がIWGPヘビーを創設した当初の世界最強を決めるという役割に再び近づけていくのではないかと思う。逆に言ってしまえば新設ベルトがこれまでのIWGPヘビー級と近似した役割をするのであれば筆者としては納得がいかない。

 

なんだかんだで楽しみ

 新しいベルトが作られて時代が変わっていくところを見ることが出来ているワクワクが正直なところ多分にあり、不安要素も多数あるが未知の世界に足を踏み入れていくことが出来るチャンピオンに対するリスペクトがある。数年後どういった形でこの出来事が語られるか分からないが筆者としては「飯伏は逃げずに負けずに諦めなかった、裏切らなかった」と語られるようなそんなストーリーがこれから広がっていくと信じたい。